◼️はじめに
HIPHOPダンスは、単なるダンススタイルにとどまらず、文化や精神を反映した自己表現の手段のひとつとして、近年、ますます注目を集めています。そんなHIPHOPダンスの魅力のひとつが、音楽やダンスに込められたエネルギーや感情、独特の雰囲気、「バイブス」です。そこで今回は、HIPHOPダンスにおける「バイブス」とは何か、その精神的な背景や特徴について深く掘り下げていきます。
◼️バイブスとは何か?
HIPHOPの「バイブス」
Vibes(バイブス)という単語は、Vibration(バイブレーション)という英語を短縮してできた略語であり、コミュニケーションの中で使われる砕けた表現(スラング英語)です。バイブレーションには「振動」という意味がありますが、「雰囲気」「魂」といった意味もあります。HIPHOPダンスにおけるバイブスは、音楽やダンスに込められた「エネルギー」や「感情」、踊りから生まれる「独特の雰囲気」のことを指します。心の中で感じるエネルギー
またバイブレーションには、気持ちがゾクゾクする、ワクワクするといった、「人の感情の揺れ動き」という意味もあります。音楽のリズムや質感に体を乗せることで生まれる「人のエナジー」も、HIPHOPにおけるバイブスの意味のひとつです。
◼️HIPHOPダンスの精神:自由と自己表現
自由な表現
HIPHOPダンスは、ヒップホップ音楽に合わせた自由な表現と自己主張を重視した動きが特徴的なダンススタイルです。他のダンススタイルと比べて厳密な型や規則がほとんどなく、その場の雰囲気に応じてリズムを感じながら動く自由さが魅力です。そのため、自分の個性を表現しやすく、自身のスタイルでダンスを行うことができます。ストリート文化からの影響
そもそもHIPHOPダンスは、1960~70年代のアメリカ、ニューヨークのブロンクス地区のストリート文化の中で始まったとされています。生まれ持ってのリズム感を持ち、飛ぶ、走るなどの身体能力にたけているアメリカ黒人ですが、長い間、差別と貧困の中で生活してきました。彼らは、その持って生まれた才能を、スポーツ、音楽、ダンスなどで活かしていくことが、存在をアピールする近道だと考え、路上やパーティーで自分たちの感情や思いを身体で表現し始めたのです。HIPHOPダンスは、こうした社会的・経済的な困難から抜け出し、自己を表現するために生まれました。
◼️バイブスを感じる!音楽とダンスの相乗効果
音楽のリズムとダンスのリンク
音楽のリズムとダンスをリンクさせることができるようになると、色々な音を体で表現することができるようになります。歌や楽器演奏で、音程が合っていてもテンポが悪かったり曲とずれていたりすると、上手に聴こえませんよね?逆に曲とぴったり合っている歌や演奏は、上手く聴こえます。それと同様に、ダンスにおいても、音楽のリズムとダンスを合わせることはとても大切です。ひたすら曲を聴きこみ、曲の雰囲気やテンポの速さに合わせて踊ってみましょう。また、緩急のある動きや突然止まるようなアクションは、観客を飽きさせない効果があります。音楽のリズムとダンスをうまくリンクさせて踊れるようになると、よりバイブスが感じられるダンスに仕上がります。音楽からのインスピレーション
バイブスを感じられるダンスにするためには、世界観を明確にすることが大切です。ダンスにおける世界観とは、身体の表現で伝えるメッセージのテーマのことです。まずは曲を聴きこんで、歌詞の意味を理解してみましょう。そして、歌詞の意味や曲を聴いて感じたこと、曲の世界観や雰囲気を、身体でどう表現すれば伝わるかを考えながら踊ってみましょう。音楽からのインスピレーションを上手く身体で表現できるようになると、世界観が伝わりやすくなり、バイブスを感じられるダンスに仕上げることができます。
◼️バイブスを高めるための練習と心構え
自分の感情を込める練習
ダンスのバイブスを高めるにおいて、音楽の世界観に入り込み、感情を込めて踊ることが大切になります。まずは、振り付けをしっかりと練習して覚え、音楽を聴く余裕や感情を込める余裕を作りましょう。振り付けで不安な点が残ると、思考が振り付けのことに引っ張られてしまうため、十分な練習をして、気持ちに余裕を持たせることが大切です。
振り付けを覚えて余裕ができたら、音楽をよく聴き、踊りに感情を込められるようにしていきましょう。曲は、歌詞だけでなく、メロディーやリズムにも意味を込めて作られています。音楽の歌詞やメロディーから曲に込められた意味を読み取り、感じたことをダンスで表現するためにどのような体の動きや表情が必要かを考えることが大切になります。
また、感情表現が上手なダンサーの真似をすることも上達への近道です。
フィーリングを大切にする
ダンスは、音楽の持つニュアンスや緩急、強弱などを感じとるセンス、それを自分の体で表現する気持ち「フィーリング」が必要不可欠であり、音の感じ方や取り方、表現の仕方のバリエーションを広く持つことが大切です。どんなに体を鍛えていろんな技ができても、フィーリングのないダンスは堅苦しく、見ていても気持ちよく乗れません。ダンスの技術を磨くだけではなく、音楽を聴き込む、色々なダンサーの表現方法を研究するなどしてセンスを磨くことが大切です。
◼️バイブスを共有する楽しさ
ダンスバトルでのバイブス交換
ダンスバトルはダンスで勝敗を決める「闘い」です。バトルは、闘う相手がいて初めて成立します。そのため、相手が踊っている時に身振り手振りや表情で反応してみたり、相手に近づいて挑発的な動きをしたり、相手がした動きを真似してみたりすることが大切です。相手を意識して踊るようにして、ダンスバトルならではのコミュニケーションをとることを意識しましょう。仲間との共鳴
その場その場、その時その時の「雰囲気」や「オーディエンス」を意識して踊り、バトル相手やオーディエンス、審査員などの仲間と共鳴することも大切です。全く同じ音楽で、全く同じダンスをしたとしても、踊る時間や場所などの環境、オーディエンスが異なれば、踊る時の感覚が変わったり、全く違った反応が返ってきたりします。そのため、その場の雰囲気に合わせたダンスやモーションをし、オーディエンスの趣向に合わせたダンスをすることが重要です。