■ オールドスクールダンスとは
みなさんは、どんなジャンルのダンスがお好きですか?ストリートダンスのジャンルは様々で、1つのジャンルの中にも色々なスタイルで分かれていたり、国によっても踊り方のニュアンスが違ったり、などダンスは非常に奥の深い特性を持つカルチャーです。
今でこそ様々なジャンルがあるストリートダンスですが、ストリートダンスが生まれたとされる1970~80年代は今ほどジャンルの数があったわけではありません。
"ポップダンス"、"ロックダンス"、"ブレイクダンス
この3つのジャンルがストリートダンスの始まりとされ、通称"オールドスクールダンス"と呼ばれています。
■ オールドスクール・ヒップホップとは
オールドスクールと聞くとヒップホップを連想される方、多いのではないでしょうか。ヒップホップは現在世界的に見て最も主流な音楽ジャンルの1つであり、ストリーミングサービスでは常に上位にランクイン、音楽の枠を超えてファッションやビジネス、政治にも影響を及ばす文化的にも大きな存在感を放っています。
そんなヒップホップですが実はまだ歴史は浅く、始まりは1980年代前半頃で人間で考えても40歳ほど。まだまだ歴史の真っただ中です。
1980年代初頭NYではディスコが一大ブームとなっており、夜な夜なセレブ達が毛皮のコートやシルクのドレスを身に纏い、高級車でパーティーに集うラグジュアリーな街として世界的に有名でした。
ですが光があれば、その裏には闇があるのが街というもの。
NYの最北端ブロンクスという地区では日常的に殺人や強盗が横行、火災件数はアメリカ国内で当時一位と、国内有数の犯罪都市とされており治安は最悪でした。
そんな街にて生まれた、若者たちの革新的な文化こそHIPHOPなのです。
HIPHOPが始まった1980~90年代頃、HIPHOPの創成期を"オールドスクール"期と呼びます
■ これを聞け!名曲10選
① Incredible Bongo Band / Apache
HIPHOPが生まれたとされるブロンクスには当時若者たちを虜にする、あるカリスマ的存在が居ました。
彼の名は"DJ クール・ハーク"
彼の催すパーティー、DJプレイはその当時までにはない画期的なものでした。その最大の特徴はファンクやソウルの間奏部分、ドラムやベースのみの演奏"ブレイク"と呼ばれる部分だけを流し、DJプレイすることでした。
HIPHOPのサウンドというのはつまり、突如生まれたものではなくファンクやソウルのサウンドが元だというわけです。
こちらの曲はごくシンプルなドラムにファンキーなメロディが特徴的な曲で当時のクラブではド定番、クールハークも度々流していたことで知られ、これぞ"ブレイクビーツ"という1曲です。
② Babe Ruth / The Mexican
"ブレイクビーツ"と聞きダンサーの皆さんが思い浮かべるのは、ブレイクダンサーでしょう。その名の通りブレイクビーツで踊ることからその名はつけられ、通称Bboyとも呼ばれております。
そんなBboyたちにとって絶対に欠かすことはできないのがこの1曲。
Babe Ruth(ベーブ・ルース)は1970年代に活躍したイギリスのロックバンド。この曲はテンポの良いドラムに中毒性抜群のメロディとボーカルが特徴です。
HIPHOP創世記のBboyたちにはもちろん、remix,remasterバージョンも多く作られ現代のBboy達でさえこの曲を知らないBboyはいないでしょう。
まさにBboyのアンセム的な曲です。
③ RUN DMC / Sucker MC's
HIPHOPといえば何と言ったってラッパーの存在は欠かせませんよね。RUN DMCはHIPHOPをアンダーグラウンドからメジャーシーンまで魅力を知らしめた先駆者的存在です。
RUN DMCは1980年代前半NYにて活躍した3人組。
カンゴールのハット、革のジャケットにゴールドのチェーンという姿は一度見たら忘れることのできない印象的な見た目をしています。
そして彼らを語るうえで重要なのが、かの有名スポーツブランド"adidas"
今でこそラッパーといえばスニーカーファッションの最先端、海外の有名ラッパーたちも頻繁にadidasやNIKEのとコラボしておりコラボスニーカーは販売開始直後に売り切れ、プレミア価格で出回るなんてこともざらです。
スポーツスニーカーをストリートファッションのアイテムとして定着させたのは間違いなくRUN DMCの影響です。
この曲はRUN DMCによるHIPHOP黎明期の代表的な1曲。
MV中に出てくるアディダスのジャージやPUMAのスニーカーには思わず目が引かれてしまいますね。
④ N.W.A / Straight Outta Compton
HIPHOPといえばNY。アメリカの東側の文化だ。という固定概念を大きく覆したのがN.W.Aという、アメリカはロサンゼルスのヒップホップグループ。
「お前はこれからストリートの智恵を知ることになる」
この曲の冒頭で歌われている通り、彼らはストリートでのハードでリアルな現実を代弁し爆発的な支持を得ました。
のちにギャングスタラップと呼ばれるジャンルを確立した立役者でもあり、今でもその功績は語り継がれています。
1980年代後半、NY中心だったHIPHOPカルチャーの目をロサンゼルスにも向けさせる転換点ともなったこの曲は必聴です。
⑤ Eazy-E / Boyz-n-the-Hood
N.W.AのメンバーEazy-Eの代表的な1曲。
地元コンプトンのギャングスタライフのありのままを攻撃的なビートに乗せたこの曲は全米に大きな衝撃を与えました。
この曲のタイトル同様、Boyz-n-the-Hoodという彼らの生きざまを描いた映 画もあり、HIPHOP好きの方は必見です。
⑥ Dr Dre / Nuthin' But A "G" Thang
活躍する人気ラッパーの陰には名プロデューサーがいるのは当然の話です。西側の火付け役となり、ウエストサイドヒップホップを確立したプロデューサー"Dr Dre"の存在はHIPHOPの歴史を語るうえで欠かせません。
1992年にリリースされたDr Dreによるアルバム「The Chronic」は革新的なアルバムであり、従来の曲よりBPMを落とした重めのサウンドを追求しジャズやファンクといったサンプリングを用いた手法はHIPHOPに大きな進化をもたらしたとされます。
のちにSnoopDogやEMINEMなどといったレジェンドラッパーを生み出した彼のプロデュース力は間違いなく本物だと言えます。
⑦ Wu-Tang-Clan / C.R.E.A.M(1993年)
HIPHOP誕生の地NYにも新たなスターは生まれ続けます。ここから90年代にNYを代表して活躍したラッパーたちを3組、曲とともに紹介していきます。
まずはWu-Tang-Clan
Wu-Tang-Clanは1993年デビューアルバムをリリースした10人組ユニットのNYヒップホップグループです。'ウータン'はカンフー映画「少林寺武者房」の登場人物からとられ、'クラン'は氏族という意味です。
(Wu-Tang-Clanのメンバーはカンフー好きとして有名です)
今でこそ大所帯のHIPHOPクルーは多いものの、Wu-Tang-Clanはその先駆けともいえます。そして彼らの凄まじいところはメンバー一ひとりひとりのソロ活動もまたハイクオリティで各々かっこいいところです。
この曲はデビューアルバム「燃えよウータンEnter The Wu-tang」に収録されている代表曲。一度聴いたら耳から離れません。
⑧ Nas / N.Y. State of Mind(1994年)
NYといえばNas、NasといえばNYブルックリンにて生を授かったNasはNYを代表するアンダーグラウンドラッパーとして今もなお活躍し続けるラッパーです。
1994年にリリースされた「illmatic」は、リアル且つコンシャスなメッセージをキレ抜群のラップに乗せたNasのデビューアルバムで、94年はHIPHOPの豊作の年とされておりますが、その中でも特に目立ったアルバムとして知られています。
リリースから約20年経った今でもなお、この作品は多くのラッパーたちの教科書として崇拝されています。
⑨ The Notrious B.I.G / Juicy (1994年)
The Notrious B.I.G、'ビギー'の名で愛される彼もまた1994年にデビューアルバムをリリースしたレジェンドラッパーです。
彼の独特な低音ラップからなされるドープなフローは世界中を魅了し、亡くなった今でも多くの人々から愛されるラッパーです。
彼の着こなすダボダボなジーンズや派手なCOOGIEのニット、Timberlandのブーツは90年代の代表的なファッションとして当時の若者はおろか現在のストリートファッションを愛する人々のお手本ともなっています。
⑩ キングギドラ / 大掃除(1995年)
最後は日本のHIPHOPシーンから1曲。日本では1980年後半から90年前半にかけHIPHOPが浸透したといわれています。
キングギドラは日本におけるHIPHOP黎明期を代表するアンダーグラウンド3人組ラップユニットです。
本場アメリカさながらの、まくしたてるようなラップと黒い雰囲気は圧巻です。
メンバーのうちの一人、Zeebraは日本人の中でも特にHIPHOPの普及に貢献したうちの一人であり、今もTVなどのメディアで活躍中です。
(実の娘がNizi-Uのメンバーとして活躍で話題ですね。しかも担当するのはラップパートです)
おわりに
ここまで10曲オールドスクールヒップホップにまつわる曲を紹介してきました。HIPHOPの歴史はほかの音楽のジャンルと比べてしまえばまだまだ浅いですが、名曲は数えきれないほど存在します。
HIPHOPにおいて特に重要とされる心構えがあります。
それは"Dig"するということです。
直訳すると掘る、という意味ですがHIPHOP的には曲やアーティストを深堀りし、知識を増やそうという意です。
この機会に是非皆さんも、HIPHOPの歴史digしてみてはいかがでしょうか